ジ・エベレスト

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ジ・エベレスト
The Everest
開催国 オーストラリアの旗 オーストラリア
競馬場 ロイヤルランドウィック競馬場
創設 2017年
2023年の情報
距離 芝1200m
格付け なし
賞金 1着賞金700万豪ドル (2023年)
賞金総額2000万豪ドル (2023年)
出走条件 サラブレッド系3歳以上
負担重量 馬齢重量
出典 [1][2]
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ジ・エベレストThe TAB Everest)とは、オーストラリアターフクラブ英語版およびレーシングニューサウスウェールズがオーストラリアロイヤルランドウィック競馬場の芝1200メートルで施行する競馬競走である。2017年創設。格付けは無し。

概要[編集]

2017年に世界最高賞金の芝競走として創設され、2023年現在までその地位にあるスプリント戦。総賞金は2000万オーストラリアドルで、その出走枠を一枠当たり60万オーストラリアドルで購入する馬主によって資金の一部が提供されている。

毎年10月の第2土曜日に施行されており、春に8週間開催される「シドニースプリングカーニバル」[注釈 1]を成す主要競走に位置づけられる[2][4]

競走条件[編集]

以下の内容は、2022年現在[1]のもの。

出走資格:3歳以上(出走可能頭数:最大12頭)

負担重量:別定

  • 南半球産馬:3歳53kg、4歳以上58.5kg、牝馬2kg減
  • 北半球産馬:3歳51kg、4歳58kg、5歳以上58.5kg、牝馬2kg減

賞金:総賞金1500万豪ドル、73万豪ドル相当の優勝トロフィー

  • 1着賞金は620万豪ドルで、以下2着230万豪ドル、3着140万豪ドル、4着100万豪ドル、5着75万豪ドル、6着50万豪ドル、7 - 12着各45万豪ドル
  • 福祉基金への寄付15万豪ドル
  • 優勝トロフィー相当額は馬主62万5000豪ドル、調教師騎手各5万2500豪ドル

出走枠[編集]

出走枠のライセンス料金は60万オーストラリアドルであり、2月1日と7月1日に各30万ドルの分割払いでレーシングニューサウスウェールズ社に対して支払われる必要がある[1]。出走枠のライセンス保持者は、自らの所有馬を本競走に出走させたり、その出走枠を他者に販売したり、他者と取引して賞金を共有したりすることが可能である[5]

前哨戦[編集]

競走名 格付[6] 施行競馬場[6] 施行距離[6] 出走資格[6] 出典
ザ・ショーツ英語版 G2 ニューサウスウェールズ州の旗 ランドウィック競馬場 芝1100m 3歳以上 [7]
ゴールデンローズS G1 ニューサウスウェールズ州の旗 ローズヒル競馬場 芝1400m 3歳 [7]
プレミアS英語版 G2 ニューサウスウェールズ州の旗 ランドウィック競馬場 芝1200m 3歳以上 [7]
モイアS G1 ビクトリア州の旗 ムーニーヴァレー競馬場 芝1000m 3歳以上 [7]
サールパートクラークS G1 ビクトリア州の旗 コーフィールド競馬場 芝1400m 3歳以上 [7]

歴史[編集]

発案者はレーシングニューサウスウェールズ社のCEOを務めるピーター・ヴランディーズ英語版[2]。2017年当時の世界最高賞金競走であったペガサスワールドカップの開催から5日経った同年の2月1日、オーストラリアターフクラブ英語版およびレーシングニューサウスウェールズ社は、ロイヤルランドウィック競馬場1200メートルで施行され、総賞金1000万オーストラリアドル(約8億5000万)、1着賞金580万オーストラリアドル(約4億9300万円)という高額賞金を提供する競走「ジ・エベレスト」を創設すると発表した[8]。この賞金は芝競走としては世界最高であり、オーストラリアにおいても毎年11月にフレミントン競馬場で開催されるメルボルンカップの賞金を超えることになった[8]。賞金の資金は、ペガサスワールドカップに倣い、3年契約で出走枠を60万オーストラリアドル(約5100万円)で購入する馬主のほか、馬券の売上げ、スポンサー料、テレビ放映権料によって拠出されるシステムを取った[8]。実際の正式名が「The TAB Everest」とされたのは、そのネーミングライツスポンサーに場外馬券発売公社英語版(TAB)を迎えたためである[9]。第1回ジ・エベレストは2017年10月14日に施行され、これを制したレッドゼルが初代優勝馬となった[注釈 3][11]。賭けの売上高は2800万オーストラリアドル以上を記録し、同年のゴールデンスリッパーなどの売上を大きく上回った[12]。2022年施行の第6回ジ・エベレストが記録した46221人という観客動員数は、ウィンクスが33連勝を達成した2019年のクイーンエリザベスステークスの動員数(43833人)を上回り、同競馬場における過去50年間の最多記録を更新した[13][14]

2022年現在、本競走が「世界最高賞金の芝競走」とされている[2]。全ての競馬開催および準州による全会一致での承認が必要であるG1格付けの獲得は、ヴィクトリア州による拒否権の行使のために実現していない[15]

歴代優勝馬[編集]

回数 施行日 優勝馬 性齢 タイム 優勝騎手 管理調教師 馬主 総賞金 / 1着賞金(豪ドル
第1回 2017年10月14日 Redzel 5 1:08:36 K.McEvoy Peter & Paul Snowden Triple Crown syndicate 09,550,000 / 5,800,000
第2回 2018年10月13日 Redzel 騸6 1:12.03 K.McEvoy Peter & Paul Snowden Triple Crown syndicate 13,000,000 / 6,000,000
第3回 2019年10月19日 Yes Yes Yes 3 1:07.32 G.Boss Chris Waller Yes Yes Yes, B Sokolski Et Al 14,000,000 / 6,050,000
第4回 2020年10月17日 Classique Legend 騸5 1:08.27 K.McEvoy L.Bridge K K Ho 15,000,000 / 6,200,000
第5回 2021年10月16日 Nature Strip 騸7 1:09.11 J.McDonald Chris Waller R A E Lyons, P D Harrison Et Al 15,000,000 / 6,200,000
第6回 2022年10月15日 Giga Kick 騸3 1:09.86 C.Williams C.Douglas Pinecliff Racing Syndicate 15,000,000 / 6,200,000
第7回 2023年10月14日 Think About It 騸5 1:07.64 S.Clipperton J.Pride Proven Thoroughbreds, R J Miller Et Al 20,000,000 / 7,000,000

批判[編集]

2018年、レーシングニューサウスウェールズ社は、シドニー・オペラハウスの帆をジ・エベレストの広告として使用した[16][17]。その計画はニューサウスウェールズ州のグラディス・ベレジクリアン州首相がオペラハウス最高責任者ルイーズ・ヘロンの拒否権を覆したことによって認可され、スコット・モリソン首相によっても支持されたが、これはオーストラリアの世界遺産にそぐわない商業広告であるとして批判を受けた[18][19]。広告の計画が実行されると、オペラハウスでは数百人による抗議のデモ活動が行われ、州政府に対して計画中止を求める請願は23万以上の署名を集めた[17]

ウィナーステークス[編集]

シドニースプリングカーニバルにおけるウィナーステークスWinners Stakes)とは、前年のジ・エベレスト優勝馬の名を冠して、ローズヒルガーデンズ競馬場の芝1300メートルで施行される競馬の競走である[20]。2019年にゴールデンイーグルの付随競走として創設され[21]、ゴールデンイーグルと同日に施行されている[22]。競走名は毎年更新される[20]

性別、馬齢に関する制限は無い[20]。ジ・エベレストとは異なり、本競走の出走手続きは伝統的な出馬投票方式に基づいている[20]

重賞未格付の競走ながら、賞金総額は100万豪ドルと高額に設定されている[23]。また、ジ・エベレスト、シドニーステークス、ザ・コジオスコのいずれかに出走していた競走馬に対してはボーナス獲得の機会が用意されており、ジ・エベレスト優勝馬として本競走1着なら100万ドル、その他の1着なら75万ドル、2着なら20万ドル、3着なら10万ドルの賞金が追加で与えられる[20]

回数 施行日 競走名 優勝馬 性齢 タイム 出典
第1回 2019年11月2日 Redzel Stakes Pierata 牡5 1:16.59 [24]
第2回 2020年10月31日 Yes Yes Yes Stakes Gytrash 騸5 1:17.85 [25]
第3回 2021年10月30日 Classique Legend Stakes Eduardo 騸8 1:15.16 [26]
第4回 2022年10月29日 Nature Strip Stakes Private Eye 騸5 1:15.93 [27]
第5回 2023年11月4日 Giga Kick Stakes Bella Nipotina 牝6 1:15.50 [28]
第6回 2024年 Think About It Stakes

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ ジ・エベレスト、ゴールデンイーグルなどが施行され、全体で4800万オーストラリアドル以上の賞金が提供される[3]
  2. ^ オーストラリアターフクラブおよびレーシングニューサウスウェールズ社[1]
  3. ^ なお、日本から移籍したブレイブスマッシュが人気薄ながら3着に入り、3着賞金80万豪ドルを獲得している[10]

出典[編集]

  1. ^ a b c d Race Conditions” (英語). The Everest. 2022年6月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年6月15日閲覧。
  2. ^ a b c d The Everest 2022 [Australia's Richest Race | Racenet]”. racenet.com.au. 2022年6月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年6月15日閲覧。
  3. ^ Sydney Spring Racing Carnival [2022 Guide | Racenet]”. racenet.com.au. 2022年6月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年6月16日閲覧。
  4. ^ The Everest” (英語). The Everest. 2022年6月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年6月15日閲覧。
  5. ^ TAB Everest - How it works - Australian Turf Club”. www.australianturfclub.com.au. 2022年6月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年6月15日閲覧。
  6. ^ a b c d Submitted_By_2011_Part_I.qxd”. www.tjcis.com. 2022年6月16日閲覧。
  7. ^ a b c d e The Everest Form Guide 2021 [Trends & Fact File]”. racenet.com.au. 2022年6月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年6月15日閲覧。
  8. ^ a b c 豪州で世界最高賞金の芝レースが創設(オーストラリア)[開催・運営]”. 公益財団法人 ジャパン・スタッドブック・インターナショナル. 2022年6月15日閲覧。
  9. ^ TAB Announced As Naming Rights Sponsor For Australia's Richest Race - The Everest - Racing New South Wales” (英語). 2022年6月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年6月16日閲覧。
  10. ^ ブレイブスマッシュは3着 芝の世界最高賞金額レース「ジ・エベレスト」、2017年10月14日公開 2021年10月6日閲覧
  11. ^ レッドゼル、世界最高賞金の芝競走ジ・エベレストで優勝(オーストラリア)[その他]”. 公益財団法人 ジャパン・スタッドブック・インターナショナル. 2022年6月15日閲覧。
  12. ^ THOMAS, RAY (2017年10月16日). “Everest turnover smashes records with huge $50 million haul in first year”. dailytelegraph. https://www.dailytelegraph.com.au/sport/superracing/nsw-racing/everest-turnover-smashes-records-with-huge-50-million-haul-in-first-year/news-story/5583b914d658e29e23ddbced71c9b70c 2022年6月16日閲覧。 
  13. ^ Thomas, Ray. “The Everest: Peter V'landys hints at 'substantial' prizemoney increase” (英語). Punters.com.au. 2022年10月21日閲覧。
  14. ^ Andersen, Steve. “Australia: Giga Kick notches upset in Everest Stakes” (英語). www.drf.com. 2022年10月21日閲覧。
  15. ^ The Everest peaks as world's highest-rated sprint - Racenet”. racenet.com.au. 2022年6月15日閲覧。
  16. ^ Collins, Pádraig. “Redzel: Aussie battlers and a Chinese billionaire mount Everest” (英語). the Guardian. 2022年6月16日閲覧。
  17. ^ a b McGowan, Michael (2018年10月9日). “Sydney Opera House racing ad protesters shine torches on sails” (英語). theguardian. https://www.theguardian.com/australia-news/2018/oct/09/sydney-opera-house-racing-ad-disrupted-as-protesters-shine-torches-on-sails 2022年6月16日閲覧。 
  18. ^ Henriques-Gomes, Luke (2018年10月6日). “'It's not a billboard': anger at use of Sydney Opera House for horse racing ads” (英語). theguardian. https://www.theguardian.com/australia-news/2018/oct/06/its-not-a-billboard-anger-at-use-of-sydney-opera-house-for-horse-racing-ads 2022年6月16日閲覧。 
  19. ^ Davies, Anne (2018年10月7日). “Opera House racing ad demanded by Alan Jones is ‘a good compromise’, Berejiklian says” (英語). The Guardian. https://www.theguardian.com/australia-news/2018/oct/07/opera-house-racing-ad-demanded-by-alan-jones-is-a-good-compromise-berejiklian-says 2022年6月16日閲覧。 
  20. ^ a b c d e Nature Strip Stakes 2022 | Tips, Odds, Field & Results | Racenet”. racenet.com.au. 2022年6月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年6月15日閲覧。
  21. ^ EXCITING CHANGES TO THE EVEREST CARNIVAL - Australian Turf Club”. www.australianturfclub.com.au. 2022年6月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年6月16日閲覧。
  22. ^ The Golden Eagle 2022 | Horses, Field, Race Time, Results & Form Guide”. racenet.com.au. 2022年6月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年6月15日閲覧。
  23. ^ ジ・エベレストから派生の100万豪ドルレース、エデュアルドが鮮やかに逃げ切り”. JRA-VAN ver.World. 2021年11月9日閲覧。
  24. ^ Race 8 - Rosehill Gardens - Sat 02 Nov 2019 | RACING.COM”. www.racing.com. 2022年6月15日閲覧。
  25. ^ Race 7 - Rosehill Gardens - Sat 31 Oct 2020 | RACING.COM”. www.racing.com. 2022年6月15日閲覧。
  26. ^ Race 6 - Rosehill Gardens - Sat 30 Oct 2021 | RACING.COM”. www.racing.com. 2022年6月15日閲覧。
  27. ^ Race 7 - Rosehill Gardens - Sat 29 Oct 2022 | RACING.COM”. www.racing.com. 2022年10月29日閲覧。
  28. ^ Race 7 - Rosehill Gardens - Sat 4 Nov 2023 | RACING.COM”. www.racing.com. 2023年11月4日閲覧。

各回競走結果の出典[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]