Telegram

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テレグラムから転送)
Telegram Messenger
スクリーンショット
スクリーンショット (iPhone)
開発元 Telegram Messenger LLP
初版 2013年8月14日 (10年前) (2013-08-14)
最新版
Android
9.1.6 / 2022年11月24日 (16か月前) (2022-11-24)[1]
Android (Telegram X)
0.24.2.1471 / 2021年11月12日 (2年前) (2021-11-12)[2]
iOS
8.6 / 2022年3月11日 (2年前) (2022-03-11)[3]
Windows, macOS, Linux
3.6.1 / 2022年3月17日 (2年前) (2022-03-17)[4]
Windows (Microsoft Store)
2.5.8 / 2021年1月30日 (3年前) (2021-01-30)[5]
macOS (Mac App Store)
8.6 / 2022年3月11日 (2年前) (2022-03-11)[6]
最新評価版
Android
5.12.0 (17400) / 2019年10月6日 (4年前) (2019-10-06)[7]
iOS
5.12 (15550) / 2019年10月6日 (4年前) (2019-10-06)[8]
Windows, macOS, Linux
3.4.5 / 2022年1月17日 (2年前) (2022-01-17)[9]
macOS
8.4.1 (226472) / 2022年1月17日 (2年前) (2022-01-17)[10]
リポジトリ
プログラミング
言語
C++
プラットフォーム Android, iOS, Windows, macOS, GNU / Linux, Webプラットフォーム
対応言語 19言語[11][12]
種別 インスタントメッセージ
ライセンス GNU GPLv2 or GPLv3 (クライアント)[13], プロプライエタリ (サーバー)
公式サイト telegram.org ウィキデータを編集
テンプレートを表示
Telegram Messenger LLP
URL telegram.org ウィキデータを編集
設立 2013年3月 (11年前) (2013-03)
本社所在地 イギリス領ヴァージン諸島の旗 イギリス領ヴァージン諸島, トルトラ島 (本籍地)
アラブ首長国連邦の旗 アラブ首長国連邦, ドバイ (運営本部)
事業地域 世界中
設立者
CEO パーヴェル・ドゥーロフ
業種 ソフトウェア
従業員数 351人 (2019年)[14]

Telegram(テレグラム)は、セキュリティー性の高さから世界中で利用されている、テキストチャット・ビデオチャットなどが可能なインスタントメッセージアプリケーションである。

アラブ首長国連邦ドバイに拠点を置くロシア人プログラマー実業家ニコライ・ドゥーロフパーヴェル・ドゥーロフ兄弟によって2013年に開発された。現在はTelegram Messenger LLPが運営している。租税回避タックス・ヘイヴン)のためにイギリス領ヴァージン諸島トルトラ島登記上の本籍地を置いている。

スマートフォンモバイルアプリケーションとして無料で利用できる。メッセージは暗号化されることでプライバシーを担保し、一定の時間が経つと消える機能もあるため秘匿性が高い。全てのファイルフォーマットを送受信できる。

また、APIが公開されているため、ユーザーが非公式クライアントを作成することが可能である[15]クライアント側はオープンソースで、サーバ側はプロプライエタリソフトウェアである。

旧ソ連圏のロシアカザフスタンウクライナベラルーシアルメニアアゼルバイジャンキルギスモルドバヨルダンカンボジアエチオピアではWhatsAppMessenger等をしのぎ、最大のインスタントメッセージアプリケーションである[要出典]

ロシア国内では2022年3月時点での利用者の割合は63%と次点のWhatsAppの32%を引き離している[要出典]

各チャンネルの共通の短縮URLは「t.me」を持っている。

歴史[編集]

共同創設者のパーヴェル・ドゥーロフ(2013年撮影)

ロシア連邦最大のSNSであるフコンタクテ(以下略称の「VK」と記述)の創設者であるニコライ・ドゥーロフ英語版パーヴェル・ドゥーロフ兄弟が2013年に立ち上げた[16]。Telegram Messenger LLPはドイツベルリンに拠点を置く独立系非営利企業であり[17]、VKとの直接的関係はない[18]。ニコライはパーヴェルによる自身のデジタル・フォートレスファンドを通しての金融支援やインフラ提供により新たなメッセンジャープロトコルであるMTProtoを開発した[19]

2013年10月時点で、1日当たり約10万人のアクティブユーザーがいたが[16]、2014年3月24日、月当たりのユーザー数が3,500万人に、1日当りのアクティブユーザーが1,500万人に達したことを発表した[20]

2013年12月21日、ロシアのITコミュニティがTelegramのセキュリティ欠陥を発見し、発見したユーザーには修正後にTelegramより10万ドルが贈られた[21]

2014年3月1日、初回のコンテストは優勝者無しで終了し、通信内容の暗号化を解除するが公開された[22][要説明]。Telegramによれば、この暗号を突破する挑戦は永続的なプロジェクトであると表明し、より激しい攻撃ができる新たなコンテストを発表した[22][23]

2014年11月、電子フロンティア財団による安全なメッセージング審査でTelegramは7点満点のうち5点と採点された[24]

2018年、TelegramはICOで約17億ドルの資金調達に成功した[25]

ロシア連邦政府による規制[編集]

ロシア通信監督庁は2018年4月、Telegramの使用を禁止し、首都モスクワで抗議デモが起きた。IPアドレスの遮断など封じ込めの取り組みに対して、Telegramは様々な技術的対抗手段を講じてロシア向けサービスを継続し、ロシア政府のネット検閲に抵抗する象徴的存在とみなされた。新型コロナウイルス感染症の流行 (2019年-)下で国民への情報提供ツールとして利用する公的機関もあり、規制は形骸化していた。

ロシア政府は2020年6月18日、Telegramが薬物犯罪やテロリズムとの闘いに協力するようになったことを理由に規制解除を発表。さらに7月には、Telegramのペレコプスキー副社長が、カザンで開かれたミハイル・ミシュスティン首相とIT業界の討論会に参加するに至った。パーヴェル・ドゥーロフは規制解除を「素晴らしいニュースだ」と歓迎した。

2022年に始まったロシアのウクライナ侵攻で、ロシア、ウクライナや欧米諸国でのインターネット規制・検閲が強まったが、テレグラムが暗号化機能を持っており、ロシア側、ウクライナ側双方からの情報発信ツール、またはアメリカ合衆国政府の規制・検閲を受けるビッグ・テック管轄外のツールとして利用されており、世界中に利用は広がっている。利用者数は延べ7億人に上る。

機能[編集]

多くのプラットフォームに対応
AndroidiOSWindows PhoneWindowsmacOSLinuxと公式、非公式含めて多くのプラットフォームに対応している[26]
様々なファイルの送受信
音声メモ、写真、ビデオを始めとする全てのファイルフォーマットを送信することが出来る上、200,000人までのグループを集めることが出来る[27]。また、WhatsAppと同じチェック1回で送信、チェック2回で受信というメッセージリードステータスのシステムを使用している[28]
高度な暗号化
さらに、WhatsAppLINEといったシェアの高いメッセンジャーアプリ以上に安全性が高いと主張しており、自社が開発したMTProtoというプロトコルを使用することでやりとりはAES-256で暗号化されているとしている[16][29][30]
2種類のチャット機能
使用できるチャットは2種類あり、通常のチャットではクライアントとサーバー間で暗号化され、複数の端末からアクセスできる。この場合、管理者の協力などにより暗号鍵を用意すれば、サーバーに保存された情報を解読することは原理的には可能である。
一方、プライベートチャットではエンドツーエンドの暗号化でアクセスは2つの参加端末のみに限られている。Telegramによれば第三者はもちろん、自社の管理者すらユーザーのメッセージを覗き込むことは出来ないとしている[31]
一定時間後に自動削除
プライベートチャットでのメッセージやファイルも読んだ後に設定した時間で自動的に消去できるようになっており、一度時間が経ったら両方の端末からメッセージが消去される[32]

アーキテクチャ[編集]

暗号化[編集]

ニコライが開発したMTProtoというプロトコルによって種類に関係なく全てのチャットは暗号化されている。このプロトコルは256ビット対称のAES暗号とRSA 2048暗号、ディフィー・ヘルマン鍵共有をベースにしている[33]

ライセンス[編集]

全ての公式クライアント(一部非公式クライアント)はオープンソースになっているが[34]、サーバー側のソフトウェアはクローズドソースのプロプライエタリソフトウェアである。パーヴェル・ドゥーロフによればサーバーのコードがフリーソフトウェアでない理由は、各サーバーがデータをやりとりしたり統合された自社のクラウドの一部として動作させるために、アーキテクチャの大規模な再設計が必要だからとしている[35]

FAQでは「全てのコードは将来オープンソース化するつもりだ。我々は開発者が新たなTelegramのアプリケーションを開発出来るようにする良い形で文書化した、APIやセキュリティのスペシャリストからのお墨付きが得られるオープンソースクライアントと最も便利な点から始めている。」としている[36]

評価[編集]

セキュリティ問題[編集]

セキュリティ研究者のモクシー・マーリンスパイク英語版やテイラー・ホーンビーといった複数の暗号化コミュニティはTelegramによる暗号解読コンテストはセキュリティ上の根拠がなく、一般へミスリードを招いていると批判している[37][38][39][40]

犯罪グループでの使用[編集]

プライベートチャットでのメッセージやファイルも読んだ後に設定した時間で自動的に消去できることや、暗号化による高い安全性などから、特殊詐欺の犯行グループ間の連絡手段、児童ポルノ薬物の取引、強盗ブラジルの議会の襲撃など犯罪にしばしば利用されている[41][42][43]

「闇サイト」「闇バイトの求人」における連絡手段としても、Telegramの連絡先が記載されることが多く、本アプリが問題視されることも少なくない。

脚注[編集]

出典[編集]

  1. ^ Telegram”. Google Play. 2022年11月28日閲覧。
  2. ^ Telegram X”. Google Play. 2022年1月18日閲覧。
  3. ^ Telegram Messenger”. App Store. 2022年3月19日閲覧。
  4. ^ Telegram Desktop latest release”. GitHub. 2022年3月19日閲覧。
  5. ^ Telegram Desktop”. Microsoft Store. 2021年2月24日閲覧。
  6. ^ Telegram”. Mac App Store. 2022年3月19日閲覧。
  7. ^ Telegram Beta 2 – HockeyApp”. rink.hockeyapp.net. 2019年10月6日閲覧。
  8. ^ Join the Telegram Messenger beta”. testflight.apple.com. 2019年10月6日閲覧。
  9. ^ Releases · telegramdesktop/tdesktop”. GitHub. 2022年1月18日閲覧。
  10. ^ Telegram Beta for macOS by Mike Renoir”. App Center. 2022年1月18日閲覧。
  11. ^ Telegram Messenger”. Telegram Messenger LLP. 2021年2月24日閲覧。
  12. ^ Telegram Messenger - App Store
  13. ^ List of Telegram applications”. 2014年2月6日閲覧。
  14. ^ Telegram Company profile
  15. ^ Webogram, http://zhukov.github.io/webogram/ 
  16. ^ a b c Meet Telegram, A Secure Messaging App From The Founders Of VK, Russia’s Largest Social Network, TechCrunch, (2013-10-27), http://techcrunch.com/2013/10/27/meet-telegram-a-secure-messaging-app-from-the-founders-of-vk-russias-largest-social-network/ 
  17. ^ Surveillance drives South Koreans to encrypted messaging apps, The Verge, (2014-10-07), http://www.theverge.com/2014/10/6/6926205/surveillance-drives-south-koreans-to-encrypted-messaging-apps 
  18. ^ [1]
  19. ^ Russia’s Zuckerberg launches Telegram, a new instant messenger service, Reuters, (2013-08-30), http://www.reuters.com/article/2013/08/30/idUS74722569420130830 
  20. ^ Telegram Hits 35M Monthly Users, 15M Daily With 8B Messages Received Over 30 Days, TechCrunch, (2014-03-24), http://techcrunch.com/2014/03/24/telegram-hits-35m-monthly-users-15m-daily-with-8b-messages-received-over-30-days/ 
  21. ^ Crowdsourcing a More Secure Future, Telegram blog, (21 Dec 2013), https://telegram.org/blog/crowdsourcing-a-more-secure-future 2014年3月3日閲覧。 
  22. ^ a b Winter Contest Ends, Telegram blog, (2 Mar 2014), https://telegram.org/blog/winter-contest-ends 2014年3月3日閲覧。 
  23. ^ Telegram Contest FAQ, https://core.telegram.org/contestfaq 2014年3月3日閲覧。 
  24. ^ Secure Messaging Scorecard. Which apps and tools actually keep your messages safe?, Electronic Frontier Foundation, (2014-11-04), https://www.eff.org/secure-messaging-scorecard 
  25. ^ コラム:「テレグラム」のICO成功、金融・IT業界が警戒”. ロイター. 2022年10月23日閲覧。
  26. ^ List of Telegram applications, https://telegram.org/apps 2014年2月23日閲覧。 
  27. ^ what-makes-telegram-groups-cool?, (2019-10-19), https://telegram.org/faq#q-what-makes-telegram-groups-cool 
  28. ^ Telegram F.A.Q.: What do the green ticks mean?, (2014-02-23), https://telegram.org/faq#q-what-do-the-green-ticks-mean 
  29. ^ Telegram F.A.Q.: How secure is Telegram?, https://telegram.org/faq#q-how-secure-is-telegram 
  30. ^ Description of MTProto Mobile Protocol, https://core.telegram.org/mtproto 
  31. ^ New instant messenger Telegram protected even from spy intrusions, VentureBeat, (2013-11-12), http://venturebeat.com/2013/11/12/telegram-messenger-app/ 
  32. ^ Telegram FAQ”. 2014年2月10日閲覧。
  33. ^ Telegram technical FAQ for Advanced users, https://core.telegram.org/techfaq 
  34. ^ Telegram source code links, https://telegram.org/apps#source-code 2013年2月12日閲覧。 
  35. ^ “Pavel Durov: "No application is 100% safe"”, El Diario Turing, (2014-02-02), http://www.eldiario.es/turing/moviles_y_tabletas/telegram-pavel_durov-entrevista-app-movil-seguridad_0_224677688.html 2014年2月12日閲覧。 
  36. ^ Telegram FAQ”. Telegram. 2014年10月10日閲覧。
  37. ^ Moxie Marlinspike (2013年12月19日). “A Crypto Challenge For The Telegram Developers”. 2014年3月2日閲覧。
  38. ^ Taylor Hornby (2013年12月19日). “Telegram's Cryptanalysis Contest”. Crypto Fails. 2014年3月2日閲覧。
  39. ^ Robin Wauters (2013年12月19日). “Cracking contest: first one who breaks Telegram gets $200,000 in bitcoins (but really, nobody wins)”. Tech.eu. 2014年3月2日閲覧。
  40. ^ Thijs Alkemade (2014年4月2日). “Breaking Half of the Telegram Contest”. 2014年4月2日閲覧。
  41. ^ 関東で多発する強盗との関連は 「テレグラム」でターゲットを指示? 東京・狛江の強盗殺人事件:東京新聞 TOKYO Web”. 東京新聞 TOKYO Web. 2023年1月22日閲覧。
  42. ^ ブラジル連邦議会襲撃、「テレグラム」に罰金命令…アカウント停止命令に従わず”. 読売新聞オンライン (2023年1月26日). 2023年1月27日閲覧。
  43. ^ INC, SANKEI DIGITAL (2018年8月22日). “機密性高い海外開発の無料通信アプリ「テレグラム」「シグナル」犯罪使用相次ぐ 消去後の復元困難 警察当局、拡大に警戒”. 産経ニュース. 2019年11月16日閲覧。

外部リンク[編集]