ホシムクドリ

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ホシムクドリ
ホシムクドリ Sturnus vulgaris
ロンドン、2月)
保全状況評価
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 鳥綱 Aves
: スズメ目 Passeriformes
: ムクドリ科 Sturnidae
: ムクドリ属 Sturnus
: ホシムクドリ S. vulgaris
学名
Sturnus vulgaris
(Linnaeus, 1758)
和名
ホシムクドリ
英名
Common Starling
自然分布
     繁殖地      周年生息地      越冬地
移入分布
     繁殖地      周年生息地
夏羽
淡緑青色の卵

ホシムクドリ (星椋鳥、学名:Sturnus vulgaris ) は、スズメ目ムクドリ科に分類される鳥類の一種である[1]

名前の由来は、暗い体色に星状の斑点がちりばめられていることによる。

分布[編集]

ヨーロッパ東部、スカンジナビア半島ロシア西部からバイカル湖周辺までの広い地域で繁殖し、冬季は中央アジアイランアラビア半島アフリカ地中海沿岸の地域に渡り越冬する。

北アメリカの広い範囲やハワイオーストラリアニュージーランド南アフリカ共和国等には、他の地域から持ち込まれた個体が外来種として生息する。

日本には亜種 S. v. poltaratskyi が、数少ない冬鳥として渡来するが、西南日本での記録が多い。ほとんどが単独の渡来だが、島根県鹿児島県では、毎年少数の群れが越冬している。

亜種[編集]

形態[編集]

全長約21cm[4] (20-23cm[5])。体重82g[5]ムクドリよりやや小型であり、くちばしもやや細い[6]。冬羽は全体が光沢のある黒色で、白や黄白色の斑が散らばっている。足は赤黒く、嘴は黒色である。夏羽では、斑が目立たなくなる。雌雄同色である。

生態[編集]

農耕地、市街地や開けた林などに生息する。日本ではムクドリの群れに混じっていることが多い。

淡緑青色の卵を4-6個産み、14-15日抱卵する。卵の大きさは2.7-3.15cm × 2.0-2.3cm。日本では繁殖しない[6]

人間との関係[編集]

原産地のヨーロッパ、19世紀に移入された北アメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカなどにおいて、ムクドリ科特有の集団就眠による騒音や糞害、さらには果樹や野菜への食害といった行動により害鳥とされている。日本では稀に見られる冬鳥であり、被害こそ少ないが害鳥とされている。

多様な環境に適応できる。移入先では生態的に優位な位置に落ち着いて大増殖し、在来鳥類の繁殖を阻害するため世界の侵略的外来種ワースト100 (IUCN, 2000)選定種に選定されている。

北アメリカでの個体数は約2億羽と推定されているが、全て1890-91年にかけてアメリカ順化協会の設立者ユージン・シーフリン英語版がヨーロッパから輸入してニューヨークセントラルパークで放ったおよそ100羽の子孫である。なお、この移入に関してはシーフリンが、ウィリアム・シェイクスピア戯曲に登場する、全ての鳥をアメリカに定着させたかったから、という理由付けがよくされるが、それを裏付ける確実な証拠はなく、あくまで推測の域を出ない都市伝説である。

作曲家モーツァルトは、ムクドリをペットとして飼っていたというエピソードが残され、彼の作曲したピアノ協奏曲第17番の第3楽章には、そのムクドリのさえずりを基にした旋律が主題として用いられているといわれるが、これはホシムクドリについての逸話である[7]

画像[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 山形則男・吉野俊幸・五百澤日丸=写真、五百澤日丸・山形則男=解説『新訂 日本の鳥550 山野の鳥』文一総合出版、2014年、239頁。ISBN 978-4829984000 
  2. ^ a b c d e f g h i j k l Clements, James F. (2007). The Clements Checklist of Birds of the World (6th ed.). Ithaca, New York: Cornell University Press. p. 599. ISBN 978-0-8014-4501-9 
  3. ^ 日本鳥類目録編集委員会 『日本鳥類目録 改訂第6版』、 日本鳥学会、2000年、270頁
  4. ^ 高野伸二 『フィールドガイド 日本の野鳥 増補改訂版』、日本野鳥の会2007年、294頁。ISBN 978-4-931150-41-6
  5. ^ a b Brazil, Mark (2009). Birds of East Asia. Princeton University Press. p. 396. ISBN 978-0-691-13926-5 
  6. ^ a b 高野伸二 『カラー写真による 日本産鳥類図鑑』、東海大学出版会、1981年、383-384頁。
  7. ^ ブライト, M. 著、丸武志 訳『鳥の生活』平凡社、1997年9月、309-310頁。ISBN 978-4-582-52724-7 

関連項目[編集]