阪急杯

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阪急杯
第66回阪急杯
(優勝馬:ダイアトニック、鞍上:岩田康誠)
開催国 日本の旗 日本
主催者 日本中央競馬会
競馬場 阪神競馬場
創設 1957年6月30日
2023年の情報
距離 芝1400m
格付け GIII
賞金 1着賞金4300万円
出走条件 サラ系4歳以上(国際)(指定)
負担重量 別定
出典 [1][2]
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阪急杯(はんきゅうはい)は、日本中央競馬会(JRA)が阪神競馬場で施行する中央競馬重賞競走GIII)である。

寄贈賞を提供する阪急電鉄は、大阪市北区に本社を置き、阪神競馬場最寄りの仁川駅を含む阪急今津線を運営する大手私鉄[3]。阪急の通称は、大東亜戦争以前の旧社名阪神急行電鉄(はんしんきゅうこうでんてつ)から取られたものである。

正賞は阪急電鉄株式会社賞[1][2]

概要[編集]

1956年まで行われていた重賞競走「阪神記念(はんしんきねん)」を廃止し、1957年に4歳(現3歳)以上の馬による重賞競走として創設された「宝塚杯(たからづかはい)」が本競走の前身である[4][注 1]。1960年より現名称に改称された[4]

なお、阪急杯が創設される前は、阪神大賞典に『京阪神急行電鉄』の旧社名で寄贈賞が出されたことがあった。

創設時は芝2200mで行われていたが、1960年より芝1800mに変更された[5]。その後も幾度かの距離短縮や施行場・施行時期の変遷を経て、1996年に短距離重賞路線が整備され「高松宮杯(現・高松宮記念)」が芝1200mのGIに改められた際、本競走も芝1200mに変更された[4]。翌年には高松宮記念の前哨戦に位置付けられ、施行時期も第2回阪神競馬に移設され、2000年には高松宮記念が3月末に繰り上げられたのに伴い、本競走も第1回阪神競馬の開幕週に移設された[4]。2006年には芝1400mに変更し、2014年からは本競走の1着馬に高松宮記念の優先出走権が与えられている[4]

外国産馬は1990年から、地方競馬所属馬は2000年から出走可能になり[5]、2005年からは外国馬も出走可能な国際競走となった[6]

競走条件[編集]

以下の内容は、2023年現在[1][2]のもの。

出走資格:サラ系4歳以上

  • JRA所属馬
  • 地方競馬所属馬(3頭まで)
  • 外国調教馬(優先出走)

負担重量:別定

  • 56kg、牝馬2kg減
    • 2022年2月26日以降のGI競走(牝馬限定競走を除く)1着馬2kg増、牝馬限定GI競走またはGII競走(牝馬限定競走を除く)1着馬1kg増
    • 2022年2月25日以前のGI競走(牝馬限定競走を除く)1着馬1kg増(2歳時の成績を除く)

2012年度より、負担重量の加増内容がGII競走と同様にされている[7][8]

2014年より、本競走の1着馬には高松宮記念への優先出走権が与えられる[4]

地方競馬所属馬は、本競走で2着までに入着すると高松宮記念に出走申込ができる[9]

賞金[編集]

2023年の1着賞金は4300万円で、以下2着1700万円、3着1100万円、4着650万円、5着430万円[1][2]

歴史[編集]

  • 1953年 - 第1回阪神大賞典に京阪神競馬会社(現・京阪神ビルディング)、松下電器産業(現・パナソニックホールディングス)と共に京阪神急行電鉄賞が寄贈される。
  • 1956年 - 第4回阪神大賞典に再び京阪神競馬、松下電器と並んで京阪神急行電鉄賞が掛けられる。
  • 1957年 - 4歳以上の馬による重賞競走として「宝塚盃」の名称で創設、(旧阪神記念)の副称をつけ阪神競馬場の芝2200mで施行[5]
  • 1958年 - 「競馬法35周年記念競走」の副称をつけて施行[5]
  • 1960年 - それまで不定期に掛けられていた京阪神急行電鉄の寄贈賞が定着することになり、名称を「阪急杯」に変更。
  • 1984年 - グレード制施行によりGIII[注 2]に格付け。
  • 1990年 - 混合競走に指定、外国産馬が出走可能になる[5]
  • 1995年 - 「震災復興支援競走」の副称をつけて施行[5]
  • 1997年 - 出走資格を「5歳以上」に変更。
  • 1999年 - 厩務員ストライキの影響で1週延期となる。
  • 2000年 - 指定交流競走に指定され、地方所属馬が2頭まで出走可能となる[5]
  • 2001年 - 馬齢表示の国際基準への変更に伴い、出走条件を「4歳以上」に変更。
  • 2002年 - 地方所属馬の出走枠が3頭に拡大[4]
  • 2005年 - 国際競走に変更され、外国調教馬が4頭まで出走可能となる[6]
  • 2007年 - 日本のパートI国昇格に伴い、外国調教馬の出走枠が8頭に拡大[10]
  • 2014年 - この年から1着馬に高松宮記念への優先出走権を付与[4]
  • 2015年
    • 出走可能頭数を18頭に拡大。
    • 外国馬の出走枠を9頭に変更[11]
  • 2020年 - 新型コロナウイルスの流行により「無観客競馬」として開催[12](2021年も同様[13])。

歴代優勝馬[編集]

距離はすべて芝コース。

優勝馬の馬齢は、2000年以前も現行表記に揃えている。

競走名は第3回まで「宝塚盃」[5]

回数 施行日 競馬場 距離 優勝馬 性齢 タイム 優勝騎手 管理調教師 馬主
第1回 1957年6月30日 阪神 2200m タカクラオー 牡4 2:17 2/5 玉田一彦 橋田俊三 平島尚一
第2回 1958年6月29日 阪神 2200m ヤマニン 牡3 2:21 0/5 浅見国一 相羽仙一 土井宏二
第3回 1959年7月5日 京都 2200m ホマレリユウ 牡4 2:17 2/5 宮本悳 橋本正晴 三好諦三
第4回 1960年5月22日 阪神 1800m ミンシユウ 牡4 1:49.4 坂田正行 仲住達弥 鈴木美智慧
第5回 1961年5月28日 阪神 1800m シーザー 牡4 1:50.7 清田十一 伊藤勝吉 伊藤由五郎
第6回 1962年5月27日 阪神 1800m ミスケイコ 牝4 1:51.1 清田十一 伊藤勝吉 伊藤由五郎
第7回 1963年5月26日 阪神 1800m ゴウカイ 牡4 1:50.7 栗田勝 武田文吾 伊藤由五郎
第8回 1964年5月24日 阪神 1800m パスポート 牝4 1:48.6 松永高徳 清水茂次 吉田善一
第9回 1965年5月23日 阪神 1850m バリモスニセイ 牡4 1:53.5 諏訪眞 諏訪佐市 小杉咲枝
第10回 1966年5月22日 京都 1800m ハツライオー 牡4 1:55.5 松本善登 伊藤修司 大久保常吉
第11回 1967年5月21日 阪神 1900m ニホンピローエース 牡4 1:54.8 田所稔 小川佐助 小林保
第12回 1968年7月7日 阪神 1900m アポオンワード 牡5 1:58.4 松本善登 武田文吾 (株)オンワード牧場
第13回 1969年5月18日 京都 1900m タカノキネン 牡5 2:00.4 小野幸治 小林稔 岩佐俊策
第14回 1970年5月10日 阪神 1900m ヒロズキ 牡4 1:57.4 田口光雄 松田由太郎 広瀬光次
第15回 1971年6月6日 阪神 1900m トウメイ 牝5 2:00.0 清水英次 坂田正行 近藤克夫
第16回 1972年5月14日 阪神 1600m フアストバンブー 牡5 1:39.9 福永洋一 伊藤修司 竹田辰一
第17回 1973年6月10日 阪神 1600m サカエカホー 牡4 1:34.9 湯浅三郎 加藤清一 陳葉枝
第18回 1974年6月9日 京都 1600m ケイリュウシンゲキ 牝4 1:35.0 上野清章 伊藤修司 龍進撃(有)
第19回 1975年6月8日 阪神 1600m シルバーネロ 牡4 1:35.0 福永洋一 武田文吾 伊藤英夫
第20回 1976年6月13日 京都 1600m ヤマニンファバー 牡4 1:38.1 日高三代喜 浅見国一 土井宏二
第21回 1977年6月12日 阪神 1600m センターグッド 牡4 1:35.2 鹿戸明 田所稔 中野優
第22回 1978年6月11日 阪神 1600m スリーファイヤー 牡4 1:37.3 岩元市三 布施正 渡辺淳三
第23回 1979年6月10日 阪神 1600m リードスワロー 牝4 1:34.4 田島信行 服部正利 熊本芳雄
第24回 1980年5月11日 阪神 1600m テルノエイト 牡4 1:34.6 飯田明弘 清水久雄 中村照彦
第25回 1981年5月24日 阪神 1400m サツキレインボー 牡4 1:24.4 米元孝一 田之上勲 堀脇操
第26回 1982年6月13日 阪神 1400m バンブトンハーレー 牡4 1:21.8 飯田明弘 伊藤修司 樋口正蔵
第27回 1983年6月12日 阪神 1400m ハッピープログレス 牡5 1:22.3 田原成貴 山本正司 藤田晋
第28回 1984年6月10日 阪神 1400m グァッシュアウト 牝4 1:24.0 小島貞博 戸山為夫 山田博康
第29回 1985年6月9日 阪神 1400m シャダイソフィア 牝4 1:21.9 河内洋 渡辺栄 吉田善哉
第30回 1986年6月8日 阪神 1400m ロングハヤブサ 牡5 1:22.5 南井克巳 小林稔 中井長一
第31回 1987年6月7日 阪神 1400m セントシーザー 牡5 1:22.3 河内洋 橋口弘次郎 杉谷枡夫
第32回 1988年6月5日 阪神 1400m サンキンハヤテ 牡4 1:21.6 増井裕 橋口弘次郎 河原サキノ
第33回 1989年6月4日 阪神 1400m ホリノライデン 牡4 1:22.0 武豊 目野哲也 堀内正男
第34回 1990年6月3日 阪神 1400m センリョウヤクシャ 牡4 1:22.3 河内洋 庄野穂積 (有)社台レースホース
第35回 1991年6月2日 京都 1400m ジョーロアリング 牡5 1:23.5 山田和広 坪正直 上田けい子
第36回 1992年6月7日 阪神 1400m ホクセイシプレー 牡4 1:25.2 須貝尚介 須貝彦三 (有)向別牧場
第37回 1993年6月6日 阪神 1400m レガシーフィールド 牝5 1:24.1 佐藤哲三 吉岡八郎 (株)ホースタジマ
第38回 1994年6月5日 阪神 1400m ゴールドマウンテン 牡5 1:20.9 岸滋彦 佐山優 (株)グリーンファーム
第39回 1995年6月3日 京都 1400m ボディーガード 牡4 1:20.0 松永幹夫 山本正司 浅川清
第40回 1996年6月16日 阪神 1200m トーワウィナー 牡6 1:08.5 河内洋 佐山優 斉藤一郎
第41回 1997年3月29日 阪神 1200m シンコウフォレスト 牡4 1:10.5 四位洋文 栗田博憲 安田修
第42回 1998年4月4日 阪神 1200m マサラッキ 牡5 1:08.5 河内洋 増本豊 丸井正貴
第43回 1999年4月10日 阪神 1200m キョウエイマーチ 牝5 1:08.6 秋山真一郎 野村彰彦 松岡正雄
第44回 2000年2月27日 阪神 1200m ブラックホーク 牡6 1:08.7 横山典弘 国枝栄 金子真人
第45回 2001年2月25日 阪神 1200m ダイタクヤマト 牡7 1:08.7 M.デムーロ 石坂正 (有)太陽ファーム
第46回 2002年2月24日 阪神 1200m アドマイヤコジーン 牡6 1:07.9 後藤浩輝 橋田満 近藤利一
第47回 2003年3月2日 阪神 1200m ショウナンカンプ 牡5 1:08.5 藤田伸二 大久保洋吉 国本哲秀
第48回 2004年2月29日 阪神 1200m サニングデール 牡5 1:08.5 吉田稔 瀬戸口勉 後藤繁樹
第49回 2005年2月27日 阪神 1200m キーンランドスワン 牡6 1:08.5 四位洋文 森秀行 平井豊光
第50回 2006年2月26日 阪神 1400m ブルーショットガン 牡7 1:22.5 松永幹夫 武宏平 (株)荻伏レーシング・クラブ
第51回 2007年2月25日 阪神 1400m プリサイスマシーン 牡8 1:20.5
(同着)
安藤勝己 萩原清 池谷誠一
エイシンドーバー 牡5 幸英明 湯浅三郎 平井豊光
第52回 2008年3月2日 阪神 1400m ローレルゲレイロ 牡4 1:20.7 四位洋文 昆貢 (株)ローレルレーシング
第53回 2009年3月1日 阪神 1400m ビービーガルダン 牡5 1:21.1 安藤勝己 領家政蔵 (有)坂東牧場
第54回 2010年2月28日 阪神 1400m エーシンフォワード 牡5 1:21.4 岩田康誠 西園正都 (株)栄進堂
第55回 2011年2月27日 阪神 1400m サンカルロ 牡5 1:20.1 吉田豊 大久保洋吉 (有)社台レースホース
第56回 2012年2月26日 阪神 1400m マジンプロスパー 牡5 1:22.0 浜中俊 中尾秀正 佐々木主浩
第57回 2013年2月24日 阪神 1400m ロードカナロア 牡5 1:21.0 岩田康誠 安田隆行 (株)ロードホースクラブ
第58回 2014年3月2日 阪神 1400m コパノリチャード 牡4 1:20.7 浜中俊 宮徹 小林祥晃
第59回 2015年3月1日 阪神 1400m ダイワマッジョーレ 牡6 1:23.8 M.デムーロ 矢作芳人 大城敬三
第60回 2016年2月28日 阪神 1400m ミッキーアイル 牡5 1:19.9 松山弘平 音無秀孝 野田みづき
第61回 2017年2月26日 阪神 1400m トーキングドラム 牡7 1:19.9 幸英明 斎藤誠 下河邉美智子
第62回 2018年2月25日 阪神 1400m ダイアナヘイロー 牝5 1:20.1 武豊 福島信晴 (株)駒秀
第63回 2019年2月24日 阪神 1400m スマートオーディン 牡6 1:20.3 藤岡佑介 池江泰寿 大川徹
第64回 2020年3月1日 阪神 1400m ベストアクター 騸6 1:20.3 浜中俊 鹿戸雄一 (有)社台レースホース
第65回 2021年2月28日 阪神 1400m レシステンシア 牝4 1:19.2 北村友一 松下武士 (有)キャロットファーム
第66回 2022年2月27日 阪神 1400m ダイアトニック 牡7 1:19.9 岩田康誠 安田隆行 (有)シルクレーシング
第67回 2023年2月26日 阪神 1400m アグリ 牡4 1:19.5 横山和生 安田隆行 三木正浩
第68回 2024年2月25日 阪神 1400m ウインマーベル 牡5 1:21.2 松山弘平 深山雅史 (株)ウイン

脚注・出典[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 『中央競馬全重賞競走成績集【古馬関西編】』では「宝塚盃」と記載されている[5]ため、当該資料を出典としている場合は「盃」を使用する。
  2. ^ 当時の格付表記は、JRAの独自グレード。

出典[編集]

  1. ^ a b c d 重賞競走一覧(レース別・関西)” (PDF). 日本中央競馬会. p. 6 (2023年). 2023年9月10日閲覧。
  2. ^ a b c d 令和5年第1回阪神競馬番組(第1~6日)” (PDF). 日本中央競馬会. 2023年9月10日閲覧。
  3. ^ 2023年度第1回阪神競馬特別レース名解説” (PDF). 日本中央競馬会. p. 3. 2023年9月10日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g h 歴史・コース:阪急杯 今週の注目レース”. 日本中央競馬会. 2023年9月10日閲覧。
  5. ^ a b c d e f g h i 中央競馬全重賞競走成績集【古馬関西編】
  6. ^ a b 2005年の成績表参照。
  7. ^ 2011年の成績表参照。
  8. ^ 2012年の成績表参照。
  9. ^ 「地」が出走できるGI競走とそのステップ競走について【令和5年度】” (PDF). 日本中央競馬会. 2023年9月10日閲覧。
  10. ^ 第1回 阪神競馬成績集計表” (PDF). 日本中央競馬会. pp. 655-656 (2007年). 2016年2月22日閲覧。(索引番号:06023)
  11. ^ 重賞競走一覧(レース別・関西)” (PDF). 日本中央競馬会. p. 6 (2015年). 2016年3月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年3月4日閲覧。
  12. ^ 売り上げ約65億円減 中山記念大幅ダウン…前年比63% | 競馬ニュース”. netkeiba.com. 2020年3月10日閲覧。
  13. ^ 2月13日(土曜)からの競馬場・ウインズ等の営業(無観客競馬・発売取りやめ)”. 日本中央競馬会 (2021年2月4日). 2021年2月5日閲覧。

各回競走結果の出典[編集]

外部リンク[編集]