Wikipedia:日本で著作権が消滅し、米国で著作権が消滅していない画像の利用方針

この方針文書は、日本国で著作権が消滅した一方、アメリカ合衆国で著作権の対象となっている画像をウィキペディア日本語版において利用する際に守るべき事項を定めたものです。この文書は、ウィキメディア財団のライセンス方針(2007年3月23日理事会決議。参考訳)に基づき、ウィキペディア日本語版における権利制限法理の適用方針 (Exemption Doctrine Policy〈EDP〉) の一つとして作成されたものです。

利用方針[編集]

対象となる画像[編集]

本方針の対象となる画像は、以下の7要件を満たしたものです。

  1. 著作物の本国が日本国であること。
    正確な定義はベルヌ条約5条4項によりますが、通常は、著作物が初めて発行された国が日本であれば、この要件を満たしています。
  2. 日本国の著作権法の下では、保護期間満了により著作権が消滅していること。
  3. アメリカ合衆国の著作権法の下で著作権の対象となっていること。
    日本で最初に発行されて30日以内にアメリカ合衆国でも発行された著作物については、アメリカ合衆国での著作権状態についても調べる必要があります。これはウルグアイ・ラウンド協定法に基づく著作権の回復の対象外であるため、著作権がアメリカ合衆国でも既に失効している可能性があります。
  4. 著作物がウルグアイ・ラウンド協定法に基づく著作権の回復の対象であること。具体的には以下の2要件を満たすこと。
    1. 著作物が発行された日が1923年(大正12年)1月1日以降であること。
    2. 1996年1月1日の時点で、著作物は日本国内において著作権の保護期間内であったこと。
      1. 1945年12月31日までに公表された匿名・変名・団体著作物は、1995年12月31日までに著作権が失効しています。
      2. 1946年12月31日以前に撮影または1956年12月31日以前に公表された写真は、1970年12月31日までに著作権が失効しています。
      3. 著作者の死後に公表された個人著作物のうち1958年1月1日から1970年12月31日までに公表された著作物は、旧著作権法により38年間保護されていたため、ウルグアイ・ラウンド協定法による著作権の回復対象になります。
      4. 映画の著作権は70年間保護されます。ただし、旧著作権法の対象になっていた作品は監督個人の著作権(死後38年後まで有効)として扱われる場合があり注意が必要です。
  5. 著作物の利用について、GNU Free Documentation License (GFDL) と CC BY-SA 3.0 Unported、またはこれらのライセンスと互換性を有するライセンスの下での利用許諾が得られていないものであること。
  6. フリーな代替物が存在しないこと。
    ウィキペディア日本語版にはフリーではないコンテントの利用基準は日本国の準拠法の問題からありません。「日本で著作権が消滅し、米国で著作権が消滅していない画像の利用方針」では日本国ではフリーであり、アメリカ合衆国ではフリーでないコンテントを対象としていますので、ウィキペディア英語版のen:Wikipedia:Non-free content criteriaの規定を準用し、フリーな代替物が無い場合のみ、この規定の対象とします。
  7. ウィキペディア以外ですでに発表されたコンテントであること。
    これもウィキペディア英語版のen:Wikipedia:Non-free content criteriaの規定を準用したものですが、これは日本国で対象のコンテントがパブリックドメインであることの立証を容易にする目的もあります。

画像利用の条件[編集]

本方針の対象となる画像をウィキペディア日本語版にアップロードするには、以下の条件をすべて満たさなければなりません。

  1. (解像度の制限)画像の縦横ピクセル数の積を310,000以下とする。(例:[注 1]
  2. (識別可能性)画像ページには、{{米国著作権継続}}を貼付する。
  3. (出所表示)画像ページにその画像が個人の著作物である場合著作者の氏名と没年、匿名または団体名の著作物の場合は公表年を明記する。
  4. (記事内容の補完目的利用)画像は、被写体に密接に関連する事柄が記述されている1以上の記事(標準名前空間)で表示されなければならない。記事における画像表示は、画像のアップロード後すみやかに行い、将来、記事において画像を使用したいという漠然とした意思があるにすぎない状態では、画像のアップロードを避けること。なお、「被写体に密接に関連する事柄」を例示すると、概ね以下のとおりとなる。
    • 被写体を主題とする
    • 被写体の作者を主題とする
    • 被写体が展示されている場所を主題とする
    • 被写体がモチーフとする物、人物を主題とする
  5. (最小限の利用)1つの記事で表示する画像は3つ以内とする。
  6. (目的外利用の禁止)標準名前空間以外には画像を表示させない。ただし、特別ページや本方針違反の疑いがあるファイルを一時的に置くカテゴリといった、百科事典のメンテナンスに必須なページを除く。
  7. (フリーな代替物が存在しない)フリーな代替物が存在する場合は画像のアップロードを避けること。フリーな代替物が画像のアップロード後に見つかった場合は直ちに当該画像を削除すること。
  8. (他所での発表)ウィキペディア以外で発表されたことが証明できない画像のアップロードは避けること。

違反時の対応[編集]

本方針の対象外の画像である場合[編集]

上記「対象となる画像」の要件を満たさない画像は、本方針の対象外です。他の画像関連方針にしたがって問題点の有無を判断してください。{{米国著作権継続}}タグが貼付されていれば取り除いてください。上記対象画像の1に該当するかどうか判断に迷う場合、著作者の人物調査をインターネットでの検索や、「名前から引く人名辞典」などの文献を使って行なってください。

利用の条件に違反している場合[編集]

本方針の対象となる画像が、上記「画像利用の条件」に違反して利用されている場合には、以下の対処を行います。

  • 条件1に違反する画像は、解像度を下げて上書きアップロードを行い、解像度を下げるまでの版は本方針違反を理由として削除対象となる。
  • 条件2に違反する画像は、ライセンス不明の画像として取り扱う。
  • 条件3に違反する画像は、出典不明の画像として取り扱う。
  • 条件4に違反する画像は、本方針違反を理由として削除対象となる。
  • 条件5に違反している記事(標準名前空間)がある場合には、いずれかの画像を編集により除去し、本方針の対象となる画像を3つ以内とする。
  • 条件6に違反しているページ(標準名前空間以外)がある場合には、当該ページから編集により画像を除去する。
  • 条件7、8に違反する画像は、本方針違反を理由として削除対象となる。

本方針違反(条件4違反)を理由として削除対象となった場合、当該画像の投稿者の会話ページにその旨を通知します。通知後、1週間経過しても違反状態が解消されない場合は、削除依頼をしてください。

条件違反を理由として対処する前に[編集]

条件違反を理由とした対処を行う際には、以下の点にも注意してください。

  • 誰でも、{{米国著作権継続}}タグの貼付、画像の出所情報の記載、名前空間への画像表示・消去など、違反状態の解消を目的とする編集をすることができる。
  • 条件4違反への対処を行う際には、画像のアップロード直後である可能性も考慮し、性急な対処は避けること。
  • 条件5違反への対処を行う際には、どの画像を残すかをめぐって編集合戦や論争が生じる可能性もあるので、十分な話し合いをすること。また、除去された画像が条件4違反となる可能性がある点にも注意すること。

解説[編集]

準拠すべき法律と方針[編集]

ウィキペディア日本語版は、ウィキメディア財団のライセンス方針(2007年3月23日理事会決議。参考訳)の趣旨にしたがい、アメリカ合衆国と、アクセス元の多数を占めると考えられる日本国の著作権法に抵触しない方針を採用しています。

また、財団理事会決議は、フリーではない画像(以下、非フリー画像)を利用する際の注意点として、アップロードされた非フリー画像は機械によっても識別可能とすること(決議2)、非フリーの画像の利用は最小限度にとどめ、百科事典の記事内容の補完などに目的を限定すること(決議3)などを、各国の著作権法とは独立して規定しています。

したがって、本方針も日米の著作権法および財団理事会決議に基づいて作成されています。

日本国とアメリカ合衆国の著作権の保護期間の相違[編集]

原則[編集]

文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約では、著作物の保護期間に相互主義を採用することが認められ、相互主義を採用する場合、その著作物の本国で著作権の保護期間が満了していれば、自国の法律上の著作権の保護期間よりも短い保護期間を適用することが許容されています。

ウィキペディア日本語版では上記の通り日本国とアメリカ合衆国の双方の著作権に抵触しない方針をとっています。アメリカ合衆国は著作権の保護期間について相互主義を採用しておらず、一般に日本国の著作権の保護期間はアメリカ合衆国の著作権の保護期間より短いため、日本国で著作権が消滅してもアメリカ合衆国では著作権の保護期間にあり、ウィキペディア日本語版に画像をアップロードできない事例が発生します。

日本国での著作権の保護期間は映画を除き、著作者の没後70年(ただし1967年以前に死亡した場合は著作者の没後50年)か、匿名または団体名の著作物の場合発表から70年(ただし1967年以前の発表作品は発表から50年)となっています[注 2]。これに対し、アメリカ合衆国では著作者の没後75年か匿名または団体名の著作物の場合発表から95年とされています。

アメリカ合衆国ではベルヌ条約の規定は米国内法に優先しない、と解釈されていましたが、ウルグアイ・ラウンド協定法(URAA)により、ベルヌ条約の履行が法制化されたため、1996年1月1日に著作物の本国においてパブリックドメインになっていない著作物は、アメリカ国内において著作権が回復することになります。

米国法における権利制限規定[編集]

日本国内で著作権が消滅し、アメリカ合衆国内で著作権の保護期間内にある画像をウィキペディア日本語版で利用することを正当化するためには、フェアユースの法理 (17 U.S.C. §107) によらざるを得ません。

第107条 排他的権利の制限: フェア・ユース[注 3]
第106条および第106A条の規定にかかわらず、批評、解説、ニュース報道、教授(教室における使用のために複数のコピーを作成する行為を含む)、研究または調査等を目的とする著作権のある著作物のフェア・ユース(コピーまたはレコードへの複製その他第106条に定める手段による使用を含む)は、著作権の侵害とならない。著作物の使用がフェア・ユースとなるか否かを判断する場合に考慮すべき要素は、以下のものを含む。

  1. 使用の目的および性質(使用が商業性を有するかまたは非営利的教育目的かを含む)。
  2. 著作権のある著作物の性質。
  3. 著作権のある著作物全体との関連における使用された部分の量および実質性。
  4. 著作権のある著作物の潜在的市場または価値に対する使用の影響。

上記の全ての要素を考慮してフェア・ユースが認定された場合、著作物が未発行であるという事実自体は、かかる認定を妨げない。

EDPの必要性[編集]

前節のとおり、ウィキペディア日本語版が考慮すべき日米両国の著作権法の下では、日本国内法で著作権が消滅し、アメリカ合衆国法で著作権の保護期間にある画像をウィキペディア日本語版で受け入れるためには、アメリカ合衆国の著作権法107条に基づく権利制限法理の適用方針 (EDP) を定める必要があり(理事会決議6)、本方針がそれに相当するものです。

ウィキメディア・コモンズとの関係[編集]

本方針の対象となる画像の受け入れ可能性[編集]

ウィキメディア・コモンズ(以下、コモンズ)とウィキペディア日本語版のライセンス方針の違いにより、本方針の対象となる画像は、コモンズでは受け入れられず、ウィキペディア日本語版でのみ受け入れることができます。

また、コモンズに既にアップロードされている画像のうち、本方針の対象になるものは、今後削除される可能性が高いといえます。したがって、当該画像をウィキペディア日本語版の記事で利用したい場合には、コモンズの画像を直接呼び出すのではなく、当該画像をウィキペディア日本語版に再アップロードすることを推奨します。

解説[編集]

コモンズのライセンス方針(2020年9月現在)によれば、コモンズは、アメリカ合衆国と著作物の本国ベルヌ条約5条(4)に定義されている)の両国でフリーな素材のみを受け入れます。これは、アメリカ合衆国と日本の著作権法を考慮するウィキペディア日本語版の運用と異なります。

本方針の対象となる画像は、アメリカ合衆国法に基づく著作権が存続しているため、アメリカ合衆国ではフリーではありません。したがって、コモンズでは受け入れられません。

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 解像度の制限 …たとえば、一般的な 4:3の場合、640×480=307,200はOK。それ以上の800×600などはNG。
    16:9の場合、720×405=291,600はOK。 768×432=331,776などはNG。
    また1:1(正方形)の場合、556×556=309,136はOK。それ以上はNG。
     (Wikipedia‐ノート:屋外美術を被写体とする写真の利用方針#画像の解像度を制限する理由についても参照)
  2. ^ 1996年1月1日時点では没後50年・発表後50年だったが、2018年12月30日から施行された法改正により、施行日前日時点で著作権保護期間内の場合は没後70年・発表後70年に延長された。詳しくは著作権法#TPP整備法による改正を参照。
  3. ^ 日本語訳は、社団法人著作権情報センターWebサイト(山本隆司・増田雅子共訳)による。

関連項目[編集]